WindowsCEから Androidへの移行の注意点

組み込みシステム開発の現実と対策

発表者: 梶原 睦

日付: 2025-08-22

アジェンダ

今日のアジェンダ

  1. Windows CEの現状
  2. Android移行のメリット
  3. 技術的課題と対策
  4. 開発環境の違い
  5. セキュリティ考慮事項
  6. 移行戦略とロードマップ

Windows CEの現状

Windows CEの終焉

  • 2023年1月: 延長サポート終了
  • セキュリティ更新: なし
  • 新規開発: 不可
  • 既存システム: リスク増大

→ 移行は必須、時間的猶予なし

Windows CEが使われていた分野

産業機器

  • POS端末
  • 医療機器
  • 計測機器
  • 制御システム

組み込みデバイス

  • ハンディターミナル
  • カーナビゲーション
  • デジタルサイネージ
  • 専用端末

Android移行のメリット

Androidを選ぶ理由

✓ 継続的なサポート

  • Googleによる定期更新
  • セキュリティパッチの提供

✓ 豊富な開発リソース

  • 大きな開発者コミュニティ
  • 充実したドキュメント

✓ ハードウェア選択肢

  • 多様なSOCサポート
  • コスト最適化が容易

移行による改善効果

セキュリティ: 月次パッチ適用可能
開発効率: +40%向上
保守コスト: -30%削減
ハードウェアコスト: -20%削減

デバイス選択肢

  • 現在: 限定的
  • 移行後: 多様な選択肢

技術的課題と対策

主要な技術的課題

1. アーキテクチャの違い

  • Windows CE: Win32 API
  • Android: Linuxベース、Java/Kotlin

2. リアルタイム性

  • Windows CEはリアルタイムOS
  • Androidは汎用OS

3. ハードウェアアクセス

  • 直接的なレジスタ操作
  • デバイスドライバーの再実装

対策1: アプリケーション層の設計

Windows CE

// Win32 API直接呼び出し
HANDLE hDevice = CreateFile(...);
DeviceIoControl(hDevice, ...);

Android

// HAL層経由でアクセス
HardwareManager hw = 
  getSystemService(HARDWARE_SERVICE);
hw.controlDevice(...);

→ 抽象化レイヤーの導入が重要

対策2: リアルタイム性の確保

課題: AndroidはリアルタイムOSではない

解決策:

  • RTLinuxパッチ: 適用可能
  • 専用RTスレッド: 高優先度で動作
  • ハードウェア処理: 専用MCUとの分離

妥協点: ソフトリアルタイム(ms単位)

開発環境の違い

開発環境比較

項目 Windows CE Android
IDE Visual Studio Android Studio
言語 C/C++ Java/Kotlin/NDK
デバッグ 限定的 豊富なツール
エミュレータ 基本的 高機能
CI/CD 手動中心 自動化対応

開発チームの準備

必要なスキル習得:

  • Java/Kotlinプログラミング
  • Androidアプリケーション開発
  • Linux システム管理

推奨研修期間: 2-3ヶ月

段階的移行: 小規模プロジェクトから開始

セキュリティ考慮事項

セキュリティ強化ポイント

1. 定期アップデート体制

  • 月次セキュリティパッチ適用
  • 自動更新メカニズム

2. アプリ署名とPermission

  • 適切な権限設定
  • 不要な機能の無効化

3. ネットワークセキュリティ

  • TLS通信の実装
  • VPN対応

産業用Android向け設定

Kiosk Mode: アプリ以外の操作を制限
Device Owner: 管理者権限でのロックダウン
Custom ROM: 不要機能を削除
セキュアブート: 改ざん防止

→ コンシューマー向けとは異なる設定

移行戦略とロードマップ

段階的移行アプローチ

Phase 1: パイロットプロジェクト

  • 小規模・低リスクな案件で検証
  • 期間: 2-3ヶ月

Phase 2: 本格移行開始

  • 既存システムの順次移行
  • 期間: 6-12ヶ月

Phase 3: 完全移行完了

  • 全システムのAndroid化
  • 期間: 12-24ヶ月

成功要因と注意点

成功要因:
✓ 経営層のコミット
✓ 十分な予算と期間
✓ 段階的な移行計画
✓ チームのスキル向上

注意点:
⚠️ 要件の見直し必須
⚠️ テスト期間の確保
⚠️ 既存資産の活用限界
⚠️ 顧客への影響考慮

まとめ

Windows CE → Android移行のポイント

1. 必然性: サポート終了により移行は必須
2. 複雑性: 技術的課題は大きいが解決可能
3. 計画性: 段階的アプローチが成功の鍵
4. 投資性: 長期的なメリットは大きい

今すぐ始めるべき行動

  • 移行計画の策定
  • チームのスキルアップ
  • パイロットプロジェクトの開始

ご質問・ご相談

ありがとうございました

梶原 睦

2025-08-22

お気軽にご質問ください

- 導入の挨拶と自己紹介 - Windows CEは長らく産業用途で使われてきた - しかし、サポート終了に伴い移行が急務 - 時間配分: 30秒

- 10分間で6つのポイントを解説 - 各セクション1-2分程度 - 質疑応答は最後に - 時間配分: 30秒

- Windows CE 2013が最後のバージョン - マイクロソフトの公式サポート完全終了 - 産業用組み込みシステムでの利用継続はリスク - 時間配分: 1分

- 幅広い分野で利用されてきた - それぞれに特有の要件がある - 一律の移行戦略では対応できない - 時間配分: 1分

- Linux基盤で安定性が高い - オープンソースで自由度が高い - 産業用Android distributions も利用可能 - 時間配分: 1分

- 具体的な数値は過去のプロジェクト実績から - セキュリティは最重要ポイント - 開発効率はツールチェーンの改善による - 時間配分: 1分

- 根本的なアーキテクチャが異なる - 既存コードの大部分は書き直しが必要 - 特にリアルタイム性が求められる用途は注意 - 時間配分: 1.5分

- 直接的なハードウェアアクセスはできない - Android HAL(Hardware Abstraction Layer)を利用 - 移行時は抽象化設計が成功の鍵 - 時間配分: 1分

- 厳密なリアルタイム性が必要な場合は設計変更必要 - ハイブリッド構成(Android + 専用MCU)も検討 - 要件の見直しが必要な場合もある - 時間配分: 1分

- 開発環境は大幅に改善される - ツールチェーンの充実度が違う - 学習コストはあるが長期的にメリット大 - 時間配分: 1分

- 既存の組み込み開発経験は活かせる - Androidspecificな知識が必要 - OJTと研修の組み合わせが効果的 - 時間配分: 1分

- Windows CEのセキュリティホール解消 - Android標準のセキュリティ機能活用 - 組み込み用途向けのセキュリティ強化 - 時間配分: 1分

- 産業用途では一般的なAndroidとは設定が異なる - セキュリティと使いやすさのバランス - 要件に応じたカスタマイズが必要 - 時間配分: 1分

- 一気に移行するのはリスクが高い - 段階的なアプローチで知見を蓄積 - 各フェーズでの学習を次に活かす - 時間配分: 1分

- 技術だけでなく組織的な取り組みが重要 - 失敗例の多くは計画不足が原因 - リスクを事前に識別して対策を準備 - 時間配分: 1分

- Windows CEからの移行は避けられない - 適切な計画と実行で成功できる - 早期着手が重要 - 時間配分: 1分

- 質疑応答の時間 - 具体的な技術相談も歓迎 - 移行プロジェクトの支援も可能 - 時間配分: 残り時間すべて